研究概要 |
I)電子供与分子素子[Ru_2^<II,II>(O_2CR)_4]の合成と酸化還元評価 電子供与体である[Ru_2^<II,II>(O_2CR)_4]について、カルボン酸部位をフッ素置換安息香酸にした分子を系統的に合成し、全ての構造、電気化学的性質、分子軌道計算によるHOMOエネルギーレベルを明らかにし、それらの電子供与能(イオン化ポテンシャル)を系統的に変化させることに成功した。また、酸化還元電位とHOMOレベルにはよい相関が見出され、Hamett則に載らないο-位の置換体であっても、Fの電子的な要因で電子供与能が決定されることを見出した。 II)[Ru_2^<II,II>]素子とTCNQ類との集積反応、物性評価 上記の知見から得られた[Ru_2(O_2CPh-F_x)_4]のHOMOレベルとTCNQR_xのLUMOレベルの相関から合理的に電子移動を起こす組み合わせを見出し、多様な化合物を得ることに成功した。その中には、D_2A型のLadder鎖、二次元層状化合物、三次元無限ネットワークの構造体があり、三次元無限ネットワークの化合物は、Tc=107Kの高相転移温度の強磁性体である(発表時点で、構造の明確な磁性体としては最高の相転移温度)。また、[Ru_2(O_2CCF_3)_4]をDに用いた二次元層状化合物で、TCNQR_x(R_x=H_4,Br_2,Cl_2,F_2,F_4)を系統的に換え、その電子親和力を変化させることにより、電荷移動がイオン化エネルギーに大きく関係していることを見出した。そのうち、TCNQF_4との集積体は、T_N=95Kの磁気相転移を持ち、且つその温度で電子ゆらぎが押さえられることを明らかにした。 III)[Ru_2^<II,II>]/TCNQとの集積体構築(referenceとして、電荷移動を起こさない系) 上記の化合物でRuの代わりにRuを用いた同構造の化合物を合成し、電荷移動の程度を実験的に捉えることに成功した。
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