研究概要 |
1.金属-硫黄クラスター[{Ru(N_2)(tmeda)}(Cp*Ir)_3(μ_3-S)_4](tmeda=Me_2NCH_2CH_2NMe_2,Cp*=η^5-C_5Me_5)の配位窒素の変換を目的として、プロトン供与体との反応を検討したが、いかなる条件においても含窒素化合物の生成は見られなかった。一方で、このクラスターは良好な電子供与体として作用し、プロトンを還元して水素ガスを生成することが判明した。穏やかな還元剤であるCp_2Coを加えた系では、このクラスターは水素発生触媒として機能し、tmeda補助配位子の部分を変更したアナログクラスターを用いて活性の比較を行うとともに、反応中間体の単離を行った。また、上記クラスターとMeOTf(Tf=SO_2CF_3)との反応では、配位窒素ではなく硫黄原子がメチル化を受けることが明らかとなり、プロトン化においても硫黄原子が優位な反応点となっていることを示唆している。 2.[(Cp*Ir)_3(μ_3-S)(μ_2-SH)_3]Clをテンプレートに用い、5,6族元素をヘテロ金属として含むキュバン型MIr_3S_4クラスターを合成した(M=V,Nb,Ta,Mo,W)。これらのクラスターのうち低原子価のMo,Wサイトを有するものは、π-受容体に対してきわめて強い逆供与能を示すことが確認されており、窒素分子の配位活性化に高い能力を持つことが期待される。 3.低原子価のMo,Wサイトを含む三方両錘型M_3S_2クラスターを合成し、構造と分光学的データから各金属の電子状態を比較した。クラスター内の個々の金属原子の形式酸化数は、金属元素の族の組み合わせだけでなく、補助配位子によっても大きく影響を受けることが分かった。
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