研究概要 |
キュバン型クラスター[{M(CO)_3}(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4](M=Mo,W;Cp^*=η^5-C_5Me_5)の骨格に埋め込まれた6族金属は強い逆供与能を有することが判明しており、窒素分子の配位活性化等に有効であることが期待されるが、そのサイトに強く結合しているCO配位子が基質の配位を妨げている。Moを含むクラスターは二座ホスフィン配位子によってMoサイトのCO二つを直接置換でき、試薬による二電子酸化を同時に行うと置換反応がより効率的に進んで二電子酸化型クラスターが得られた。Wアナログの配位子置換は酸化剤を添加する方法でのみ進行した。残りのCO配位子の解離と基質分子配位座の生成を試みたが、再現性の良い結果は得られていない。一方、(CO)_3クラスターとo-キノンとの反応ではすべてのCOが解離し、カテコラート配位子(L)を有するクラスター[{MO(L)}(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4]が中程度の収率で得られた。このクラスターは還元剤とプロトン源存在下においてヒドラジンの還元的N-N結合切断を触媒し、活性は6族金属Mとカテコラート配位子に依存した。 ヘテロ金属がTaのクラスター[(TaCl_3)(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4]を過剰のヒドラジンと反応させたところ、O原子とヒドラジンで二つのTa原子間が架橋されたダブルキュバン構造が形成された。水を添加すると収率は向上し、モノ架橋オキソ型の[{(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4Ta(OH)}_2(μ_2-O)(μ_2-RHNNHR)]Cl_2(R=H,Me)が単離された。一方、K[PF_6]を添加した系ではビス架橋オキソ型の[{(Cp^*Ir)_3(μ_3-S)_4Ta}_2(μ_2-O)_2(μ_2-MeHNNHR)][PF_6]_2(R=H,Me)が得られた。これらの構造は酵素活性部位における窒素分子の還元過程と関連がある。
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