研究概要 |
ジメチルアリール白金-マンガン二核錯体を合成し、メチル基移動反応への可視光加速効果の波長依存性を確認し、白金-マンガン結合上の電子がビピリジン配位子に電子遷移するMLCTが加速効果の主たる要因であることが明らかとなったが、その後のプロセスは検討することができないほど非常に速いものであることが分かった。 架橋錯体(dppe)Pt(μ^2-COCH_2Me_<3-k>C,_kO)Mn(CO)_4および非架橋型の錯体(dppe)(COCH_2Me_3)PtMn(CO)_5を用いたチイランおよびチエタンの開環反応においては、後者では炭素の立体反転を伴っておりSN2型で進行したが、前者の架橋錯体では、中間体は見られず立体保持で反応が進行した。なお、後者とチイランの反応得られた中間体マンガナサイクル錯体は、加熱によりブテンを立体保持で与えた。どちらの場合もチイランとの反応で生成する錯体は、X線構造解析によりチオカルボキシラト架橋の錯体であることが明らかとなった。後者の直接的な脱硫反応を動力学的に検討した結果、反応はチイランの濃度の増加に伴って速度が増加したが、三級ボスフィン配位子の添加による効果はなかった。また、ラジカル禁止剤の影響も受けなかったことから、協奏的に進行しているものと推定された。このように、白金-マンガン二核錯体による含イオウ小員環化合物の脱硫反応では、架橋配位子が反応の立体選択性を制御していることが明らかになり、白金とマンガンの協同効果がみられた。 パラジウム錯体を触媒とするヒドリドタングステンのオレフィンやアセチレンへの付加反応は、完全にマルコフニコフ型背進行し、三級ボスフィンを配位子に一つだけもつ錯体が非常に活性種が高いことが分かり、中間体としてパラジウムータングステン有機ヘテロ二核錯体が重要な役割を果たしていることがであることが明らかとなった。
|