研究概要 |
1.細孔拡散係数測定法の開発 移動相としてテトラヒドロフランを使用するサイズ排除クロマトグラフィー系において、高分子量ポリスチレン(分子量約30,000)及びベンゼンを試料物質として用いるピークパーキング実験を行った。前者は分子サイズが大きいため細孔内に進入できず、一方後者は細孔内部を含むカラム内の全空隙部分に浸透する。このため、前者を用いる実験からは粒子問空隙流路のみにおける拡散現象に関する情報が得られ、後者の拡散現象は粒子内細孔部分と粒子間空隙部分の両方における動的挙動を反映している。ベンゼンの拡散情報から高分子量ポリスチレンのそれを差し引いて細孔拡散に関する情報を導出し、細孔拡散係数を求めた。その結果は、非保持条件下におけるパルス応答実験から得られた値と良く一致した。 2.モーメント理論に基づくクロマトデータの解析-速度論との比較 全多孔性C18-シリカゲル球状粒子、C18-シリカモノリス、シェル型C18-シリカゲル球状粒子、及び非多孔性C18-シリカゲル球状粒子の各充填カラムを用いる逆相系のクロマト分離データの解析に、本研究で開発した系統的モーメント解析法と既往の速度論的解析法を適用し、両者による解析結果を比較した。 速度論的解析法の速度式中には、物理的定義が不明確な経験パラメータが含まれている。このため、カラム内での溶質分子の動きを表わす拡散係数や物質移動係数等の速度パラメータを、クロマトデータから具体的な数値として定量的に求めることができない。一方本研究では、モーメント解析法の適用により、クロマトグラフィー挙動に関係する各種速度パラメータ(拡散係数や物質移動係数)情報を定量的に導出した。 研究の結果、クロマトグラフィー挙動の定量的速度解析を行う上で、モーメント解析法が既往の速度論に比べて優れていることを実証した。
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