研究概要 |
本研究では,代表者らが開発してきた脳を対象とするバイオセンシング法を基盤として,それらをより微小な時空間のバイオセンシング法として発展させ,脳の基礎研究に役立てることを目的とする。以下の4項目を中心とした分子センシング法の開発を行った。(1)生きている脳海馬スライスを対象に,キャピラリーセンサーによる計測と電気刺激とを一体化することによって,神経伝達物質L-グルタミン酸の濃度変化をreal timeに計測した。その結果、神経領野CA1で放出される細胞外L-グルタミン酸濃度はLTP後に増加することを見出した。また、長期増強現象はグルタミン酸の高濃度な放出が関わることを示した。化学的LTPによっても同様な現象が観察された。(2)海馬スライス内にうめ込みが可能なパッチセンサーを構築することを検討し、CA1領野への埋め込みが可能なことを見出した。それを用いて塩化カリウム刺激および塩化テトラエチルアンモニウム刺激によるグルタミン酸放出の検出に成功した。(3)脳内情報伝達分子を検索することができる人工脂質二分子膜界面を構築することを検討し,平面および球状脂質二分子膜界面を化学修飾することによって、それぞれBSAおよびサブスタンスPを高感度に検できる電気および蛍光分析法を構築することに成功した。(4)極微小サンプルで脳内情報伝達分子を計測する光検出法の開発を目指し、ガラスキャピラリー内化学修飾法の検討を行い、脂質二分子膜を作成することに成功した。
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