レーザー光の電磁場、レーザー誘起光熱変換による温度場や外部直流電場などの力場を複合した新たな多元分離場を設計し、多機能な微粒子の選別分離分析法を開発するための基礎検討を行った。 まず、分離挙動に対する微粒子の吸光度や屈折率の効果を明らかにするための基礎的な検討として、任意のサイズ、任意の光学的性質が得られる有機液滴の作成を試みた。液滴作成のために吐出機を購入し、高速度カメラを用いて再現性の良い有機微小液滴の作成実験条件を探索、決定した。作成した水中のマイクロメートルサイズの液滴微粒子および着色ポリスチレン微粒子を対象として、多元分離場における微粒子の挙動を顕微鏡システムにて観測した。多元分離場として直流電場による電気泳動力および電気浸透流とレーザー光による光泳動力を同軸で作用させることができるセルを設計、製作した。石英製のキャピラリー中にレーザー光を全反射現象を利用して照射し、キャピラリー中に均一な輻射圧場を作成した。キャピラリー両端には白金電極を設置し、直流電場を印加できる構造とした。 製作したセルを用い、輻射圧と電気泳動力、電気浸透流を同方向または逆方向に作用させて、微粒子の泳動挙動の観測を試みた。この結果、直流電場の印加により微粒子が泳動することが確認でき、さらにレーザー光の照射により、その泳動速度が変化することがわかった。この挙動の違いから電位勾配による電気泳動、レーザーの輻射圧による光泳動、媒体の電気浸透流が微粒子に及ぼす作用力をそれぞれ分離し、さらに微粒子のサイズ、吸光度、電荷などの性質と泳動挙動の関係を明らかにする予定であったが、作成したセルに長時間電場を印加すると白金電極から気泡が発生し、キャピラリー中に制御できない流れが発生することが判明した。さらにセルの構造に改良を加え、精密な泳動挙動観測ができるシステムを構築する予定である。
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