研究概要 |
本研究は、触媒的不斉合成反応における「反応性」を飛躍的に向上させ、従来不可能とされてきた「高立体選択性」を実現することを目的とし、革新的かつ力量ある光学活性触媒の創製に挑む。以下に本年度の研究成果を示す。 1.アルデヒド類およびケトン類の不斉シアノシリル化反応:(1)ベンズアルデヒドを標準基質とし、触媒の構造および反応条件の最適化を行った。光学活性ジホスフィンBINAPとフェニルグリシンを配位子とする新規Ru錯体を合成した。この錯体とLi_2CO_3からなる複合金属触媒が極めて高い反応性とエナンチオ選択性を示すことがわかった。基質/触媒比10,000で反応は完結し、光学活性シアノヒドリンシリルエーテルが97%eeで得られた。これまでで最も高い反応性と最高水準の立体選択性を達成した。(2)複合金属触媒を用い、種々の芳香属アルデヒド類の不斉シアノシリル化反応を検討した。多様な立体的・電子的環境にあるアリール基や複素環をもつアルデヒド類を93~98%の不斉収率でシアノ化することができた。本触媒の基質一般性の高さを確認した。 2.ケトン類の不斉水素化反応:(1)BINAPと光学活性ジアミンDMAPENを配位子とするRu錯体を触媒(二官能性触媒)に用い、カルコンに代表されるアリールビニルケトン類の対応するアリルアルコールへの不斉水素化を達成した。基質/触媒比10,000で反応は完結し、目的生成物を最高98%eeで得た。酵素還元を含め、初めての成功例である。(2)カチオン性の光学活性Cp^*-Ir型触媒およびアレーン-Ru型触媒を適宜用いることで、これまで成功例のないα-クロロケトン類およびα-ヒドロキシケトン類の高エナンチオ選択的水素化を達成した。(3)二官能性Ru触媒を用いることにより、3-キヌクリジノンの不斉水素化の実用化に成功した。平成21年度中に2.2トン製造した。
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