研究概要 |
1.アルデヒド類およびケトン類の不斉シアノシリル化反応:(a)フェニルグリオキサールジエチルアセタールを基質とする反応条件の最適化を行った。光学活性ジホスフィンBINAPとtert-ロイシンを配位子とするRu錯体とC6H5OLiを組み合わせた「複合金属触媒」を用い、シアノヒドリンシリルエーテルを97%ee(基質/触媒比10,000)で得た。(b)種々のグリオキサールジアルキルアセタールを同様の条件下で反応させ、高立体選択的に生成物を得た(最高99%ee)。(c)光学活性シアノヒドリン類を用い、α-ヒドロキシ-β-ラクタム等の有用物質合成へ展開した。(d)複合金属触媒の構造を同定し、反応経路を特定した。 2.ケトン類の不斉水素化反応:(a)BINAPと光学活性ジアミンを配位子とするRu錯体(二官能性触媒)を合成し、X線結晶構造解析、NMR分析等を駆使し、その構造を同定した。ジアミンの種類により、反応点近傍の不斉環境が変化することがわかった。(b)Cp*-Ir型触媒、(η6-C6H5)-Ru型触媒、および二官能性触媒を使い分け、環状構造等をもつ脂肪族ケトン類やアルキニルケトン類を>95%の不斉収率で水素化することに成功した。(c)本研究で得た種々の光学活性アルコールを用い、抗鬱剤等の中間体合成を行った。 3.アリルアルコール類の不斉1,3-ヒドリド転位反応:(a)種々の二官能性触媒を用い、γ,γ-二置換アリルアルコールのヒドリド転位反応における触媒構造と反応条件の最適化を行った。BINAPと1-フェニルエチレンジアミン類を組み合わせたRu錯体を用い、アルデヒドを>98%の不斉収率で得た。従来の報告例で最も高いエナンチオ選択性を達成した。(b)最適化された触媒と反応条件を用い、基質の適用範囲を検討した。γ位の二つの置換基がアリール基とアルキル基の場合に高い選択性が得られた。
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