カテキン、エピカテキン等に代表されるフラボノイド系ポリフェノールは、茶やワインの成分としてなじみ深いがこれらは容易に構造変化を受けやすく、一般に分離困難な類縁化合物の混合物としてしか得られないため、個々の化合物の性質が調べられた例はほとんどない。その一方で、天然由来のポリフェノール類は多種多様な一大化合物群を成し、特にカテキン類のオリゴマーに顕著な抗腫瘍性が示されていることなどに注目すると、これらには未知の有用な生理活性の発見が期待される。したがって、天然から得ることの難しい各種カテキン類縁体を合成により供給することができれば、この領域のさらなる進展に大きく寄与できる。そこで本研究では、カテキン類(モノマー)ならびにカテキンオリゴマーの一般的な合成法の開発を目指し研究を行った。その結果、カテキンモノマーの合成に関し、従来にない独自の方法論を開拓することに成功し、困難であった水酸基の数や立体配置の異なる様々なカテキン類縁体の合成が可能となった。また、当初の研究計画どおり異常結合型(分岐型)カテキンオリゴマーの合成に関し検討を進め、その選択的合成に初めて成功した。さらに、異なるカテキンユニット(カテキン、エピガロカテキン、エピアフゼレキン)から構成されるヘテロ三量体の合成にも成功し、本研究のさらなる進展に新たな道筋をつけることができた。
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