研究概要 |
パラジウム触媒とトリエチルホウ素共存下,イソプレンとベンズアルデヒドを反応したところ,プリンス反応タイプのアリル化反応が進行した。添加する配位子の種類により反応性が顕著に異なる。とりわけ二座配位子が効果的であり,特にXantphosを用いると高収率で反応が良好に進行した。イソプレンの1位炭素上でアルデヒドが反応し,共役ジエン骨格を持つホモアリルアルコールが得られた。様々な共役ジエンを検討した。イソプレン誘導体に対しては,いずれも1位のオレフィン炭素上で反応し,相当するジエニルアルコールを与えた。本反応は,共役ジエンに対して特異的に進行し,典型的なエン反応の基質であるα-メチルスチレンや1-ヘキセン等の単純アルケンを用いても反応は進行しない。 ソルビン酸メチルを用いるとエステルのα-炭素上で反応が進行し,森田-Baylis-Hillman反応の付加物を単一生成物で与えた。このように,形式的ではあるがプリンス反応と森田-Baylis-Hillman反応を同一条件で促進する。従来から知られるカルボニル-エン反応の応用という位置づけではなく,これまでに類のない新しいタイプのアリル化反応であるといえる。親電子剤として芳香族アルデヒドのみならず,脂肪族アルデヒドにも適用可能であり,ラクトールを用いても反応は遜色無く進行した。収率向上の課題はあるものの,ケトンやイミンを用いても反応は進行した。 以上の,研究内容はThe Journal of the American Chemical Societyに掲載された。
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