研究概要 |
我々はカリックス[5]アレーンとフラーレンの包接を用いてフラーレンをもつポリマーを架橋することにより,物性を制御しようと考えた。フェニルアセチレン誘導体を用いた重合反応により,フラーレンを含むポリマー(M_n=13000, M_w=18000, M_w/M_n=1.4)を得た。テトラキスカリックス[5]アレーン誘導体をこのポリマーを加え,サイズ排除クロマトグラフィーの測定を行った。ポリマーの分子量(M_n=13000, M_w=18000, M_w/M_n=1.4)に比べ,テトラキスカリックス[5]アレーン誘導体を添加したときのポリマーの分子量(M_n=32000, M_w=90000, M_w/M_n=2.8)は大きく増加した。このことはフラーレンを側鎖にもつポリマーがテトラキスカリックス[5]アレーン誘導体とフラーレン部位の非共有結合により架橋されたことを示している。また,走査型電子顕微鏡を用いてガラス表面上に調整したフラーレンを含むポリマーの形態を観察した。フラーレンを含むポリマーのみから調整したフィルムでは,凝集したモルフォロジーが観察された。これは,フラーレンの強い凝集力によるものと示唆される。一方,フラーレンを含むポリマーとホストの混合溶液をキャストし観察すると,フラーレンの凝集はほどけ,ネットワーク構造が観察された。以上のように,フラーレンの分子認識を利用した超分子架橋は固体状態における形態の制御に有効であることが分かった。この様な非共有結合を利用したポリマーの架橋は共有結合を利用した架橋に比べ弱いにもかかわらずポリマーの分子量や形態を制御できることを明らかにした。
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