多環式芳香族化合物は、発達したπ共役系に起因する特異な電子・光学的物性を示すことが知られており、これらが次世代のプラスチックエレクトロニクス材料の中心に位置することは論を待たない。本研究では、平面性/非平面性巨大π共役分子のナノ相分離という新しい概念のもと、巨大多環式芳香族化合物の集合様式を精密にデザインし、従来にはない階層性と機能性を有する新たな電子活性ソフトマテリアル群を創製することをめざす。具体的には、外場応答性を有する液晶材料の創成を目指し、ソフト電子デバイスのデザインへの確固たる足がかりを築く。研究初年度である本年度は、巨大π共役分子の平面性に着目して、二つの分子デザインを確立した。 一つ目は、完全縮環ポルフィリンを基体とする巨大平面液晶性分子である。没食子酸を基体とする側鎖の親水性・疎水性の違いや中心金属の違いにより、完全縮環ポルフィリンがカラム状に積層した構造を単位とする、多彩な液晶分子ライブラリを構築しうることが明らかとなった。 二つ目はコランニュレンと呼ばれるフラーレンの部分構造を基体とした巨大非平面液晶性分子である。コランニュレンは曲面を持つ巨大多環式芳香族化合物である。お椀構造であるコランニュレンが積層した一次元カラムは、カラム長軸方向に異方性を有するため、外部刺激によりお椀の反転を制御し、カラムの電場応答性が期待できる。没食子酸とアミド部位を有する側鎖を取り付けたコランニュレン化合物が液晶状態にてヘキサゴナルカラムを形成し、電場に応答してカラムが電極に対し垂直に配向する現象を見出した。この配向は電場印可終了後も持続した。
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