研究課題
巨大多環式芳香族化合物ライブラリーの構築に時間を要し、液晶物性評価並びに材料評価の開始時期が遅れたが、これは、本研究課題にて開発した液晶性完全縮環ポルフィリンの関連物質として、ポルフィリン環同士のスタックを強めることを目的とした新化合物を合成したためである。具体的には、同一の完全縮環ポルフィリン核に、メゾ位に、長鎖を有する没食子酸部位をアルキル鎖にて直接取り付けた化合物である。意外にもこの化合物が基板に対しホメオトロピック配向することを発見した。ホメオトロピック配向は有機薄膜太陽電池素子開発のための好ましい性質である。さらに、縮環ポルフィリンの中心金属に依存して配向性に影響が出ることを明らかにした。すなわち、透明点が高く安定なπスタック集合体を与える縮環金属ポルフィリンはホメオトロピック配向を与えにくく、透明点が比較的低い金属縮環ポルフィリンは、ホメオトロピック配向を与えやすい事がわかった。例えば、縮環亜鉛ポルフィリンは比較的平面性が高く、従って、πスタックが強いためにバルク中での分子集合が優先し、ホメオトロピック配向を与えない。一方、縮環ニッケルポルフィリンは、ポルフィリン平面が湾曲しており、πスタックが弱いため、基盤との相互作用が比較的強く、基盤表面での核形成が優先され、その後の分子集合を経てホメオトロピック配向が実現されたと考えられる。金属の違いがπスタックの強さに影響し、集合体のマクロな配向様式に決定的な影響を与えていることがわかった。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 133 ページ: 6537-6540