多環式芳香族化合物は、発達したπ共役系に起因する特異な電子・光物性を示す事が知られており、これら次世代のプラスチックエレクトロニクス材料の中心に位置する事は論を待たない。本研究では、平面性/非平面性巨大π共役分子のナノ相分離という新しい概念のもと、巨大多環式芳香族化合物の集合様式を精密にデザインし、従来にはない階層性と機能性を有する新たな電子活性ソフトマテリアル群を創製することを目指す。具体的には、ポルフィリンを基盤骨格とした新たな液晶性材料の創成をめざし、ソフト電子デバイスのデザインへの確固たる足がかりを築く。 これまでの有機薄膜太陽電池材料で、太陽光の大きな部分を占める近赤外領域の光を吸収できる分子はほとんど知られていない。近赤外も含む可視領域全体に渡る光吸収材料を目指し、縮環ポルフィリン2量体から5量体をコアとする液晶分子を合成した。その結果、全ての分子はオブリークカラムナー液晶相を示した。さらに、可視領域全域の光を吸収するのみならず、特に縮環5量体に関しては吸収端が2500nmを越え、狙い通り近赤外領域の光も吸収することが明らかとなった。これらの液晶性材料は、ホール輸送材料として働くことを確認しており、最大で2.4 x 10-2 cm/Vsの移動度を有する。驚くべき事に、縮環2量体から5量体は形が大きく異なるにもかかわらず、互いに相分離することなく、移動度も犠牲にすることなく混合することが明らかとなった。
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