本研究では、電気化学セルが生成する活性酸素の驚異的に高い酸化力に着目し、酸素の活性化過程を理解するとともに、電気化学セルをナノサイズ化することによって、その酸化力を触媒反応に利用することを試みる。昨年度はガソリン排ガス中の低級炭化水素(主にプロパン)を取り上げたが、今年度はディーゼル排ガス中のパティキュレートマターの燃焼反応を検討した。プロトン伝導性Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7粉体にPt微粒子を10wt%の割合で物理混合した触媒系では、カーボン燃焼が200℃から開始され、この温度はSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7粉体やPt微粒子単独の触媒系よりも200℃、またPt/γ-Al_2O_3触媒系よりも150℃ほどそれぞれ低温であった。さらに、Pt1活性点あたりのカーボン燃焼速度で比較すると、Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7-Pt触媒系はPt単独やPt/γ-Al_2O_3触媒系より2-3桁高い速度を発揮した。 Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7-Pt触媒系での反応機構を調べるため、Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7を電解質、Ptとカーボンの物理混合体を電極に使用した電気化学セルを構成したところ、Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7とPtの界面で活性酸素が生成し、カーボンを電流効率100%で燃焼することが見出された。さらに、そこに酸素が共存すると、カーボンと水蒸気のアノード反応と酸素のカソード反応が同時に進行して、局所電池を形成していることも判明した。従って、Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7-Pt触媒系でも、これらの界面でナノサイズの電池が数多く構成され、カーボンを特異的に低温燃焼することが考察された。最後に、Sn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7-Pt触媒系において、Pt微粒子をSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7粉体の表面に含浸法で担持し、Pt使用量の低減化を試みた結果、1wt%のPt量でも高い触媒活性を保持しており、本触媒の高い実用性が示唆された。
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