研究課題/領域番号 |
21350073
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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キーワード | プロトン導電体 / 白金-ロジウム触媒 / 活性酸素 / 炭化水素酸化 / 一酸化窒素還元 / 局所電池機構 |
研究概要 |
本研究では、電気化学セルが生成する活性酸素の驚異的に高い酸化力に着目し、酸素の活性化過程を理解するとともに、電気化学セルをナノサイズ化することによって、その酸化力を触媒反応に利用することを試みる。一昨年度はプロパン燃焼、さらに昨年度はカーボン燃焼をターゲット反応として設定し、検討した結果、どちらの反応においても電気化学反応で活性化された酸素種の方が触媒反応で活性化された酸素種よりも反応速度が数桁高いことを実証した。今年度は自動車三元触媒が担うプロパン酸化と一酸化窒素還元を同時に進行させることを目的とした。プロトン導電体であるSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7触媒担体に用いて、これにPtとRhクラスターを担持した触媒を調整し、化学量論比のプロパン、一酸化窒素、および酸素の混合ガスを供給して、その触媒活性を評価した。その結果をまとめると、1)プロパンが酸化され、一酸化窒素が還元されることを確認した、2)プロパンと一酸化炭素転化率が同じPt-Rh/γ-アルミナ触媒上での値に比べてかなり高かった、3)PtとRhの担持量をそれぞれ0.01wt%と0.005wt%に低減しても、触媒活性が依然として高く保持されていた。これらの結果から、触媒担体にSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7を使用することにとって、PtとRh量を二桁低減できることが確認された。また、このような高活性がもたらされた理由を明らかにするため、電気化学セルを作製し、アノードにプロパンと水蒸気の混合ガス、カノードに一酸化炭素を供給したところ、電極間で大きな電圧を発生し、そこから燃料電池にように電流を取り出すことが可能であった。しかも、各電極室からの出口ガス分析を行ったところ、プロパンと一酸化窒素量が通電とともに減少することも見出された。従って、担持触媒でもPtとRhクラスターの卑な部分でプロパンの電気化学的酸化反応、並びに貴な部分で一酸化窒素の電気化学的還元反応が進行し、特異的に高い反応活性を示したものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自動車三元触媒の貴金属量を二桁低減することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
プロトン導電体としては、これまでSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7を使用してきたが、その他にもSn_<0.95>Al_<0.05>P_2O_7やSn_<0.9>In_<0.1>P_2O_7も候補としてあげられる。これらにはプロトン導電率に差があるため、触媒活性とプロトン導電率の関係を調べることは学術上の意義が高い。また、新たなプロトン導電体として、最近、Fe_<0.5>Nb_<0.5>P_2O_7がSn_<0.9>In_<0.5>P_2O_7よりも高いプロトン導電率を有することも見出した。このプロトン導電体を担体として使用すれば、さらなる触媒活性の向上に繋がるものと期待される。
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