研究概要 |
今年度は昨年度と同様、プロパン酸化と一酸化窒素還元を進行させる三元触媒において、これまで見出された高い触媒活性を利用し、PtとRh使用量の大幅な低減化を目的とした。プロトン導電率が異なる、各種イオン導電性触媒担体(Fe0.4Ta0.5P2O7, Sn0.9In0.1P2O7, Sn0.95Al0.05P2O7, Sn0.9Mg0.1P2O7)にPtとRhクラスターが担持した触媒を調製し、化学量論比のプロパン、一酸化窒素、および酸素の混合ガスを供給して、触媒活性を評価した。その結果をまとめると、1)どの触媒でもプロパンが酸化され、同時に一酸化窒素が還元された、2)触媒間のプロパンと一酸化炭素転化率がFe0.4Ta0.5P2O7>Sn0.9In0.1P2O7>Sn0.95Al0.05P2O7>Sn0.9Mg0.1P2O7の順で高かった3)触媒活性が最も高いFe0.4Ta0.5P2O7担体では、PtとRhの担持量をそれぞれ0.01wt%と0.005wt%に低減しても、触媒能が高く保持された。これらの結果から、触媒担体にFe0.4Ta0.5P2O7を使用することによって、市販触媒に対してPtとRh使用量を二桁低減できることが確認された。このような高活性がもたらされた理由を明らかにするため、電気化学セルを作製し、アノードにプロパンと水蒸気の混合ガス、カノードに一酸化炭素を供給したところ、プロトン導電率が高い電解質ほど電極間で大きな電圧を発生し、そこから多くの電流を取り出すことが可能であった。また、H1 MAS NMR分析から、プロトン濃度よりもその移動度が導電率を支配していることが判明した。従って、触媒クラスターの卑な部分でプロパンの電気化学的酸化、並びに貴な部分で一酸化窒素の電気化学的還元が進行し、特異的に高い反応活性を示したものと推測された。
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