有機骨格包含かご型金属種を新しい金属性状制御手法の提供につながると考え、その合成と性質に関する基礎的知見を得るための検討を行った。金属種として三つのチューニングサイト(金属中心、腕、基幹部分)を考慮し以下に示す検討を行った。実際には、フェノキシ配位金属錯体をメインに行った。 1)基幹部分への他の元素導入 炭素より大きなケイ素およびゲルマニウムを基幹部分にとりこんだ錯体を合成した。その結果、緻密にルイス酸性が制御されることを明らかにした。 2)金属部分への他の元素導入 ホウ素よりも大きな金属であるアルミニウムを導入することを試みたが、予想に反して多核錯体が得られた。現在構造決定を行っているところであるが、新しい形のルイス酸触媒として作用する可能性が見いだされた。 3)腕部分への立体的・電子的制御置換基の導入 電子求引基を腕部位に導入することで、大きなルイス酸性の向上を達成することができた。また、立体的にかさ高い置換基を金属周りに導入することで、立体選択的な合成反応触媒として用いることが可能となった。 4)基幹部分にπ電子効果誘起部位を導入 基幹部分に電子効果誘起部位としてベンゼンを導入する錯体の合成に成功した。中心金属はサイズの大きなガリウムが適切で、その結晶構造解析にも成功した。高配位状態をとりやすいガリウムをかご型にすることで、背面からの配位を抑制した形のルイス酸を構築することが可能となり、新しいルイス酸触媒としての可能性を拓くことができた。
|