研究概要 |
初年度に合成に成功した有機骨格包含かご型金属種をさらに発展させる、もしくは新型のテンプレートを用いる検討を行った。 1) 三座配位リチウム錯体 フェノキシ部位を3つ有する配位子とブチルリチウムとの反応により、複核のリチウム錯体が生成し、かご型を二つ有した形のユニークな化合物の合成に成功した。リチウムが6つ酸素が6つで六角柱型の構造をしており、堅固な構造である。X線結晶構造解析に成功し、詳細な構造学的特性に関する情報を得ることができた。また、この化合物の各種溶媒中での挙動を分光学的に観測し、かご型金属種の性状を詳細に検討した。予想よりもはるかに速い配位子交換が起こっていることや、金属の交換が進行していることがわかった。 2) かご型錯体の不斉環境導入 すでに合成したかご型錯体に光学活性な配位子を導入し,ジアステレオマーとして錯体を得ることに成功した。これらのCDスペクトルに基づく光物性を観測することで、不斉配位子のかご型錯体への影響を検討中である。また、配位子の酸素に対するオルト位に置換基を入れる手法をいくつか成功したことから、今後はこの部位にキラル源を導入する検討を行い、同様の検討を行う。 3) 多種官能基導入かご型錯体の性状緻密制御 ケイ素を基幹部分に有するかご型錯体に、多様な置換基(電子吸引、供与基)を導入し、その性状変化を検討した。その結果、配位子解離速度が変化することがわかった。これは、ケイ素とホウ素のスルースペース相互作用が影響している可能性が示唆される結果である。また、理論計算において、LUMO順位が緻密に変化することも確認できた。
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