新しいルイス酸創成をめざし、有機骨格包含かご型金属種の開発を目的としている。本年度、以下の成果を得た。 1)スルースペース相互作用の確立かご型錯体の中心元素としてケイ素、ゲルマニウムを配した形の金属種を合成し、そのスルースペース効果を見積もった。その物性挙動をスペクトル的に解析し、配位子交換速度をモデルとして、ルイス酸性の緻密な制御に成功した。 2)かご型錯体の不斉環境導入ビアリール骨格を有する不斉環境を有するかご型ホウ素錯体の合成に成功した。この触媒がhetero Diels-Alder反応において、80%eeを越える不斉収率を与えた。芳香族アルデヒドよりも、脂肪族アルデヒドにおいて高いエナンチオ選択性を達成した。また、CDスペクトルによりその挙動を明らかとした。 3)重元素ルイス酸の構築金属中心に重元素を用いるルイス酸は、これまであまり研究されておらず、またその立体的要因と物性挙動の関係が明らかになっていない。本研究のかご型錯体のテンプレートに、重金属を導入する検討をおこなったところ、スズやビスマスを導入したものが生成した。現在、スペクトル的な証拠のみが得られている。 4)芳香族選択的反応 かご型金属錯体の金属反応場周辺に、芳香環で囲ったπポケットを配する錯体を合成した。これが、芳香族アルデヒドよりも脂肪族アルデヒドに対して圧倒的な選択性をしめす触媒として作用することを明らかとした。
|