色素増感太陽電池のナノポア中での電解質拡散と開放電圧の関係を調べ、電荷再結合の起こりやすさと開放電圧(Voc)の相関を明らかにし、高効率化への指針を得ることを目標に研究を続けた。I3-のチタニアナノポア中での拡散はチタニアのナノポアの表面を被覆している置換基の種類によって異なり、極性基を有している置換基ほどヨウ素レドックスとの相互作用が強くチタニア内電子とヨウ素との間での電荷再結合が起こりやすくVocが低下する。今期は高電圧型高効率太陽電池として注目されているCoレドックス種のチタニアポア内拡散と色素構造の関係、およびVocとの関係を明らかにすることを目的に研究を行った。色素として一般的に良く使用されるルテニウム色素、スクアリル色素、シアニン色素、インドリン系色素、フタロシアニン色素、ポルフィリン色素を用いてチタニアナノポアの内壁を修飾し、色素とCoレドックス種との拡散を検討した。同種類の色素で比較したところ、コバルト錯体と相互作用しやすい置換基を有する色素で修飾したチタニアほど、ナノポア内でのCo3+の拡散が小さい。さらに拡散が遅いほどチタニア内電子とCo3+との電荷再結合が起こりやすく、Vocが低下することがわかった。4年間の研究で、ヨウ素レドックス、コバルトレドックスとも、チタニアナノポア壁を修飾する色素との相互作用が大きいほどレドックス種の拡散が遅く、チタニア内電子とレドックス間での電荷再結合が起こりやすく、電圧が低下する傾向がある。二種類のレドックス種、色素群を用いた研究により、レドックス種との相互作用が小さな長鎖アルキル基を置換させた色素が高電圧型色素増感太陽電池に適していると結論できた。長鎖アルキル基はレドックス種のポア内拡散を促進させるばかりでなく、立体的にレドックス種がチタニア表面に拡散することを防止し、高電圧化を可能にしているものと考えられる。
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