圧力誘起超伝導体(BDA-TTP)_2I_3では、一軸圧印加方向を変えることにより、電子構造が1/2充填バンドから1/4充填バンドへと変化することが期待できる。そこで本研究では電子構造の変化に伴う超伝導の出現範囲及び超伝導特性を解明し、高温有機超伝導体の探索することを目的としている。本年度は、1/4充填バンドであると考えられ、c軸近傍の超伝導発現領域ならびに超伝導転移温度を調べるとともに、圧力下でも1/2充填バンドである考えられるa軸近傍に関しても超伝導が出現しないか、15kbar以上の高圧下において電気特性を調べた(大阪市立大村田研との共同研究)。その結果、a軸圧力下では17kbarから、b軸圧力下では18kbarから超伝導が出現することを見出した。しかし、c軸圧下では高圧では超伝導が出現しなかった。今回は高圧下のみでしか測定を行っていないため、c軸圧下、7~12kbarで出現する超伝導と高圧で出現した超伝導の関係は明白ではなく、次年度の研究課題として残されている。バンド幅と超伝導臨界圧力の相関や電子構造と超伝導転移温度の相関などを明らかにするためには、一軸圧下での結晶構造解析が必要である。前年度の経験を生かして作製した試料室を大きくした圧力セルを用いると、結晶は壊れず、反射スポットも観測されたが、結晶構造解析まで至っていない。ベリリウムなどからの反射点の除去法や吸収補正法など確立して、次年度には構造解析を行い、」は可能であると、圧力の駈け過ぎによりベリリウムが破損したため、一軸圧下での構造解析には成功していないが、次年度は破損しない範囲の圧力において構造解析を行い、バンド幅と超伝導臨界圧力の相関など明らかにする。
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