配位結合を用いた超分子集合体で溶液中から結晶を作製する場合、結晶格子内に分子の方向性を結晶全体として一方向に揃えることは難しいが、表面という二次元場で分極ベクトルを一方向に揃えて高次構造を形成することができれば、酸化還元などにより大きな分極変化を表面に誘起できる。そこで、四脚型ホスホン酸基をアンカー基としてもつビス(ベンズイミダゾリル)ピリジン三座配位子を合成し、その配位子をもつレドックス活性金属錯体を固体表面に固定し、その配向について検討した結果、AFMから分子は表面に対して分子軸を垂直にして配向していることがわかった。さらに、表面単分子膜上の配位基とジルコニウムイオンとの錯形成を利用して配位結合を利用した分子の逐次積層化を行った。単純な溶液浸積によりベクトル的な成長が表面で可能であることがわかった。また、金属間相互作用の強い架橋配位子系としてテトラピリジルピラジンを用いることで、混合原子価状態を安定に表面に作製できることがわかった。 相互作用の強い錯体の場合には、段階的な二段階一電子移動反応が起こり、途中に混合原子価 M(II)-M(III)状態が生成する。表面に固定された錯体の場合、この混合原子価状態が表面でどのような分極方向をもっか今後さらに検討していく予定である。また、ルテニウム錯体の電位および電荷分布をチューニングするためにオルトメタル化したRu-C結合をもつ錯体を合成し、MLCT吸収波長および酸化電位の変化を単核錯体で行った。ビス(ベンズイミダゾリル)ピリジンのピリジン基をフェニル基としてRu-Cをもつ三座配位子としたところ、酸化電位を約0.4V負電位側にシフトさせることがわかった。
|