プレポリマーとリンカーを可逆反応により架橋して得られる高分子材料に対して、多彩な機能を追求している。従前の研究で、結晶性のプレポリマーを可逆反応により架橋した材料に対し、熱履歴を変化させて結晶化と架橋の順序を調節することにより、硬質/軟質の物性間を熱応答的に変換可能な材料を開発した。本年度の研究においては、このこの材料に対し、プレポリマーの分子量、すなわち、架橋点間距離を調節することにより、材料の結晶性(結晶化度と微結晶サイズ)を制御し、硬質、軟質の両性質ともに系統的に変化させることに成功した。特に、軟質の物性に関しては、完全に非晶性のエラストマーを得ることも可能となった。また、劣化や外力による破壊を自己的に修復する材料の開発にも成功した。この材料の修復には、次のような機構が期待されている。破壊の際には、化学構造上、最も弱い結合である可逆反応部位が優先的に切断される。この切断は同時に、より強い共有結合により構成されるプレポリマーやリンカーの化学構造を破壊から保護する役割も果たしている。可逆反応部位は容易に再結合可能であるため、結果的に、元の材料と化学的に等価な材料に修復される。このため、この可逆性架橋高分子は、完全性の高い修復機構を備えた材料である。このように、本研究では、可逆反応部位の分子設計により動的な構造変換や自己修復性などの機能性を、プレポリマー主鎖の分子設計により材料特性を、それぞれ独立に制御することにより、多様な機能性や材料特性を有する材料の開発に成功した。
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