本研究ではプレポリマーとリンカーを可逆反応により架橋して得られる高分子材料に対して、多彩な機能を追求している。従前の研究で末端フラン化プレポリマーとトリスマレイミドリンカーを熱可逆反応でつないで得た架橋高分子に対して修復性および、可逆反応の修復に対する寄与を確認した。本年度は、プレポリマーに代えてオリゴマー(および低分子)を用いて、試料中のフランとマレイミド濃度を高めて、また、2官能性リンカーと3官能性リンカーを混合して架橋密度を調整して、様々な材料特性および修復性能を有する材料を開発した。 また、フランとマレイミドのDA反応は100℃程度で平衡が解離反応に移動するため、得られる架橋高分子の耐熱性も100℃までとなる。そこで、解離反応がフラン/マレイミドより高温で起こる可逆反応を用いて高分子系を合成し、高耐熱性の修復材料を/開発した。この材料では、同時に結晶性についても制御し、室温でも自発的に修復する自己修復性を付与することにも成功した。 さらに、昨年度までの研究で、結晶性の末端フラン化プレポリマーをトリスマレイミドにより架橋した材料に対し、熱履歴を変化させて結晶化と架橋の順序を調節することにより、硬質/軟質の物性間を熱応答的に変換可能な材料を開発してきた。本年度の研究において、フラン基周辺の分子環境を変えることにより、フランとマレイミドの平衡状態を制御できること、および、平衡状態の制御が得られる高分子の材料物性に大きな影響を与えることを明らかにした。
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