研究概要 |
本研究ではプレポリマーとリンカーを可逆反応により架橋して得られる高分子材料に対して、多彩な機能を追求している。本年度は本研究の最終年度にあたるが、交付申請時の計画に照らして順調に進行しているため、本年度計画分(下記1,2)および取りまとめに加えて、研究で得られた新たな知見に基づく研究(下記3)も行った。 1.これまでに、可逆反応として熱可逆性ディールス・アルダー(DA)反応を利用した修復材料について検討してきたが、本年度は光可逆性材料の修復性について研究した。種々検討した結果、桂皮酸末端を有するプレポリマーと4官能性桂皮酸を光架橋した材料で、光修復性を確認した。 2.従前の研究で、可逆反応により架橋した結晶性ネットワークポリマーで、架橋と結晶化の順序を代えると硬軟の物性間の作り分けが可能であることを示してきたが、架橋と結晶化を同時進行させことにより、強度と柔軟性のバランスに優れた材料が得られることを明らかにした。さらに、可逆反応部位周りの化学構造を変えると、架橋生成速度や架橋密度に違いが生じ、その結果、機械的特性にも影響が表れることも明らかにした。 3.可逆反応として多重水素結合を利用し、さらに.水素結合性官能基の周りを嵩大高い官能基により修飾することにより、結晶性を保ったまま修復する、結晶性の自己修復高分子材料の開発にも成功した。分子運動性を低下させる結晶相の存在は、通常、修復性の妨げとなるため、これまで結晶性高分子の修復は、融点以上の高温または溶媒存在下、すなわち、結晶相の非存在下でのみ実現されていた。開発した材料では修復処理中もバルク結晶化度を保たれており、従来より機械的強度の高い材料に対して修復性の付与を可能にするものである。
|