研究課題
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、3段階の酸素添加反応によってヘム(鉄-ポルフィリン錯体)を鉄イオン・一酸化炭素(CO)・ビリベルジンに分解する酵素である。HO反応は生理的に重要なだけでなく、その特異な反応機構にも興味が持たれている。本研究では、従来型HO反応の完全解明を主な目的とするとともに、近年見つかった新たなヘム分解反応の解明をも目標とする。通常のHO反応について、最重要ステップであるベルドヘム開環メカニズムの解明をメスバウアー分光法により検討した。まず、ラベル化したベルドヘム-HO複合体の調製法を改良し、出発状態に含まれる不純物の除去に成功した。さらに嫌気状態での反応液迅速凍結システムを構築することで、経時的なメスバウアースペクトル変化の測定に成功した。この結果、短寿命の鉄4価錯体の生成が確実に示され、長年の謎であったポルフィリン環開裂機構が明らかとなった。HO反応の新規ヘム代謝産物に関しては、動物細胞の培養液中から検出することに成功した。その生成量は低酸素状態で増加し、これは精製酵素を用いた反応系の場合と同じであった。これらの結果は新HO反応が生体内でも進行しうることを示すとともに、その生体内挙動は精製酵素系での知見に基づいて予見可能なことを示唆している。さらに、従来型HOとは異なるファミリーに属する結核菌由来のヘム分解酵素(MhuD)の研究も進めた結果、生成物がビリベルジンとは大きく異なることが示された。特にCOが遊離しないことは、MhuDがベルドヘム中間体を経由しないでヘムを開環させていることを示し、従来のヘム分解メカニズムとは全く異なる反応機構が予想される。今後、この機構の違いなどをターゲットとした抗菌剤の開発などが期待される。
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10.1016/j.jmb.2011.08.043