研究概要 |
平成23年度の研究において、次世代核酸医薬として有望な、2'-O-Me-ボラノホスフェートRNAの立体選択的合成をおこない、その性質を明らかにした。 ボラノホスフェート型核酸類縁体は、その脂溶性の高さから細胞膜透過性に優れ、ヌクレアーゼ耐性も高いことから核酸医薬として有利な性質を有する。一方、2'-O-Me修飾を有するリボヌクレオシド誘導体は高い二本鎖形成能と免疫誘導抑制効果から、糖部修飾核酸医薬として有用である。本研究では、2'-O-Me修飾を有するボラノホスフェートRNAの合成を検討した。前年度までの検討で確立した、固相法によるオリゴマーの鎖長延長反応条件を適用し、リン原子の立体が制御された2'-O-Meウリジル酸ボラノホスフェート10量体を合成した。 次に、相補的なアデニル酸10量体と形成する二重鎖の熱力学的安定性を温度可変UV測定により評価した。生理的条件下(100mM NaCl)では、Sp絶対立体配置を有する2'-O-Me-ボラノホスフェートRNAのTm値は天然型よりも23.3。C上昇し,顕著な二本鎖の安定化が見られた。一方、Rp絶対立体配置を有するオリゴマーは二本鎖を形成しなかった。これまでに知られている最も二本鎖形成能が高いリン原子修飾RNA類縁体は、Rp絶対立体配置を有する2'-O-Me-ホスホロチオエートRNAであるが、天然型と比較したTm値の上昇は11.4℃であり、これと比較しても2'-O-Me-ボラノホスフェートRNAは二本鎖形成能が極めて高いといえる。 以上、本研究の成果は、siRNAやアプタマー等の化学修飾型核酸医薬の研究分野に大きく貢献することが期待できる。
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