我々がすでに開発した修飾ヘキスト色素とそれを特異的に捕捉するRNAアプタマーのペアを基盤とする"青色蛍光RNA(blue fluorescent RNA)"に関しては、これを小分子のセンシングに応用することに成功した。ここでは、上記"青色蛍光RNA"をATPに対するアプタマーとコミュニケーションモジュールを介して連結したものを作成した。後者にATPが結合するとコミュニケーションモジュールに構造変化がおこり、その結果、蛍光RNA部位が活性形になり青色蛍光を発する仕組みになっており、ATPに対する選択性も非常に高い。これにより、何らラベル化の必要のないATPセンサーが実現した。 一方、新たな色素として赤色のBODIPY(共役ジピロールをBF_2基で架橋した構造を有する)の有用性に着目し、これをRNA相互作用部位としてのアミノ糖(トブラマイシンなど)と連結した新規蛍光モジュールを開発した。ここでは、発光部位(BODIPY本体)がフェニル基を介してアミノ糖と連結しているが、BODIPYとフェニル基をつなぐ結合が自由回転すると蛍光がオフ状態になり、RNAとの相互作用により回転が阻止されると蛍光ONとなるように仕組まれている。これは場の微視的極性の変化に基づく従来法とは異なる蛍光オン/オフ制御機構であり、次年度以降の研究の展開にとって極めて重要な成果である。
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