研究課題/領域番号 |
21350091
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
青山 安宏 同志社大学, 理工学部, 教授 (00038093)
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キーワード | BODIPY / RNA / 蛍光 / 転写 / トブラマイシン / タグ / アプタマー / 融合RNA(DNA) |
研究概要 |
タンパク質の発現や局所化などの動的挙動を解析するには蛍光タンパク質GFPをタグとして用いる方法が著名である(ノーベル化学賞受賞)。同様の方法をRNAの挙動解析に応用する場合、致命的な難点は"光る蛍光RNA"が知られていないことである。そこで本研究では、環境応答性の色素とこれを特異的に捕捉するRNA配列(アプタマー)のペア(モジュール)を"光るRNAタグ"として用い、この色素がアプタマーに結合した際に強い蛍光を発するように色素自体を工夫しておく。そして、アプタマー配列を対象RNAの下流に配する。融合RNAの鋳型となる融合DNAの転写を色素存在下で行うと、対象RNAの発現に伴いタグRNAが共発現され、これが色素と結合することにより蛍光を発し、これにより対象RNAの発現が蛍光モニターできるという仕組みである。 平成23年度の成果は以下のとおりである。(1)蛍光強度が分子の内部回転に依存するBODIPYにトブラマイシンを結合したトブラマイシン-BODIPYを"色素"として合成した。(2)トブラマイシンに対する既知のアプタマー(トブラマイシン-アプタマー)はトブラマイシン-BODIPYと強固に結合し、後者の蛍光強度を特異的に増強することが確認できた。(3)トブラマイシン-アプタマーを、トブラマイシン-BODIPYの存在下、鋳型DNAの転写により発現させると、発現に応じて蛍光強度が増強することも示され、これにより、研究の基本的なコンセプトが正しいことが判明した。(4)具体的な転写解析の応用としてtRNAの下流にアプタマーを配した融合DNAの転写を色素存在下に検討し、転写過程が上記同様に蛍光モニターできることが明らかになった。これにより、部分的にではあるが、研究の目的が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いろいろと困難な点もあったが、(1)アプタマーとの特異的相互作用により蛍光オン化する色素合成に成功したこと、(2)これ(アプタマーと色素のペア)をタグとして用いることにより、実際の転写過程が蛍光モニターできることを実証したこと、の2点により、少なくとも研究は"おおむね順調に進展している"ものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)"色素"がRNAタグとの相互作用により蛍光増強するメカニズムを、BODIPY以外の色素系やRNA以外の生体高分子系も含め、物理化学的に解明する。(2)より有効なアプタマーの取得に努める。23年度に用いたアプタマーはトブラマイシン-アプタマーであるが、本来はBODIPY-トブラマイシンに対するアプタマーが理想的である。その取得をSEL EX法により検討したが、うまくゆかなかった。磁気ビーズへの固定化法の検討など、必要である。(3)対象RNAとして23年度に検討したtRNA以外のmRNAに拡張する。これらの検討により、より感度と精度の高いRNA動的挙動解析システムの構築を目指す。
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