DNAを配列特異的に認識する人工核酸を基盤とした各種コンジュゲート等により、二重鎖、三重鎖、四重鎖核酸といった核酸の高次構造を高度に制御し、生きた細胞内での遺伝子発現の強制的促進をも含めた真の遺伝子発現制御法の開発を目指し、H22年度は以下の内容を検討した。 まず、遺伝子発現を制御している可能性が示唆されているグアニン四重鎖の形成制御法の確立を目指し、H21年度に合成したアクリジン誘導体をガン関連遺伝子のDNA配列を認識する三重鎖核酸形成オリゴ核酸と複合体化する事に成功した。また、シトシン塩基との塩基対は形成するがグアニン四重鎖を形成しない新たな架橋型人工核酸BNAの合成に成功し、グアニン四重鎖を形成し得る配列のシチジンリッチ鎖(グアニン四重鎖を形成しない側の鎖)を標的とするオリゴBNAを設計、合成した。さらに、これらオリゴ核酸類が標的二重鎖DNAに及ぼす影響を各種分光法により評価し、グアニン四重鎖の形成を促進出来る事を明らかとした。 また、申請者らが開発してきたアンチジーンブロック法を改良し、これまで転写の阻害に利用していたステムループ構造の代わりに転写結合能を持つとされる種々のペプチドをコンジュゲートした新たな転写活性化オリゴヌクレオチドを設計し、クリック反応を利用した合成検討を実施した。 一方、細胞を破壊すること無く遺伝子発現の制御を確認可能なモデル評価系の構築を検討し、レポーター遺伝子としてGFP(Green Fluorescent Protein)などを有するトランジェントな細胞評価系を作成した。
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