1)AMDaseの反応メカニズムとマリーンエンザイム アリールマロン酸脱炭酸酵素(AMDase)の立体構造から、活性発現に関与していると考えられるアミノ酸を推定し、アラニンに置換した変異体を作成し活性を測定した。その結果、P14A、T75V、S76A、Y126A変異体では、完全に脱炭酸活性が消失した。したがって、これらのアミノ酸残基が活性発現に関与していることが強く示唆された。また、石垣島のリーフより採集した微生物から海洋性のAMDaseのクローニングに初めて成功した。今後、塩濃度依存等のマリーンエンザイムの特徴把握を行う予定である。 2)構造情報を用いた酵素活性の向上 酵素活性の向上を期待して、基質の進入経路上に存在するY80、Y126の変異体を作成しが、Y80Aでは野生株の約5%に低下し、Y126Aでは完全に失活した。今後、1)で得られた知見をもとに特定した残基について変異導入を実施し、活性向上を検討する。 3)至適pHの改変 pHプロフィールの測定条件の最適化を行った。その結果、基質濃度により大きく影響を受けて、ある条件では幅広い範囲で最大活性を示すことが分かった。今後更に、条件検討を行い正しい最適pHが測定可能な条件を検討する。 4)エステルラセマーゼの創出 モデリングソフトとX線結晶構造解析により、野生型と変異型の酵素・基質モデルを作成することができた。現在、G74Cの脱炭酸活性が完全に消失したラセマーゼを作成することを目指して変異実験を行っている。また、エステラーゼをマロン酸ジエステルに作用させることで、AMDaseと同様の脱炭酸を行わせることに成功した。エステラーゼによる脱炭酸反応に関する知見は、AMDaseの反応メカニズムにも有用な知見をもたらすと考えられており、今後双方の反応機構を比較しながら機能改変を実施する。
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