研究課題/領域番号 |
21350096
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮本 憲二 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60360111)
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キーワード | アリールマロン酸脱炭酸酵素 / 機能改変 / ラセマーゼ / 活性向上 |
研究概要 |
1)AMDaseの反応メカニズムとマリーンエンザイム 前年度までに、アリールマロン酸脱炭酸酵素(AMDase)の立体構造から、脱炭酸反応のメカニズムを明らかとしている。そして、この情報を基に各種機能改変を行っている。 2)構造情報を用いた酵素活性の向上 反応メカニズムおよび立体構造を参考に活性の低かったS体選択的AMDaseの活性向上を試み、約920倍と劇的に脱炭酸活性の向上した4重変異体の取得に成功した。しかし、この変異体は、1置換のフェニルマロン酸には高い活性を示したが、光学活性体に重要なフェニルメチルマロン酸に対する活性が3重変異体より低下していた。そこで、アリールメチルマロン酸に適した変異体の取得を目指して、変異導入法とスクリーニング法を改良した。具体的には、3重変異体に対して複数箇所に同時に変異を導入し高速スクリーニングを行った。更に、スクリーニング基質としてフェニルメチルマロン酸を用いて、光学活性体の生産に於いて有用な変異体を選抜した。その結果、活性化が約2倍、Km値が大幅に向上した変異体を取得することに成功した。その変異体のデータを追加してPCT出願を行った。 3)ラセマーゼの機能改変 前年度は、反応メカニズムを参考としてAMDaseより創出したラセマーゼの活性向上と基質特異性の拡張を行った。その結果、脱炭酸酵素活性はほぼ消失し、ラセミ化活性の向上した完全な人工ラセマーゼの創出に成功した。ラセマーゼ活性の更なる向上を目指した高速スクリーニング系の検討を開始している。また、新たな試みとしてエステラーゼを用いた脱炭酸反応を検討した。そして、マロン酸ジエステルに好熱性アーキア由来のエステラーゼを作用させることで、酵素による加水分解と熱による自発的脱炭酸反応を1ポットで実現した。現在この反応の最適化と変異導入による選択性の向上を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の酵素の機能改変に於いて最も困難と考えられていた触媒活性の劇的な向上に成功した。この知見は、今後の機能改変に於いて先導的な成果であると考えている。また、もの知見を利用して人工酵素であるラセマーゼの触媒活性の向上と基質特異性の拡張に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
人工酵素であるS体選択的な脱炭酸酵素の触媒活性の向上においては、新たに開発した高速スクリーニング系を用いて更に活性の向上した変異体の探索を実施する。また、今までは触媒活性のみに注目していたが、酵素との親和性(Km)の向上も検討する。そして、これらの結果を用いて構造と触媒活性に関する統合理解を行う。
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