有機電界効果トランジスタ(OFET)において、結晶面内配向を制御することで、キャリア輸送を制限している結晶ドメイン境界のエネルギー障壁を無くした「電気的単一ドメイン」OFETを作成する方法を研究する。さらに、単一ドメインOFETに残る数~十数meVのバンド端ゆらぎを利用したTHzセンサの実現に向けての基礎的な研究を進める。 21年度は、有機低分子半導体の代表格であるペンタセン、および、ペンタセンに比類するキャリア移動度を有し、さらに大気暴露によるキャリアドープや酸化が生じにくいジナフトチエノチオフェン(DNTT)について、基板表面に化学エッチングによってスロープ構造を形成した「グラフォ基板」上での面内配向傾向を調べた。ペンタセンについては、我々のグループの先行研究結果と同様、グラフォ基板上の直線的な「折れ線」にペンタセン結晶核がa軸方向を平行に配向して成長する傾向が再現された。一方、折れ線部に平坦基板上では見られない非c軸配向で高く成長する異常グレインがときおり発生することが確認された。これは、平均膜厚を20nm程度以下にすることで抑制されることが判明した。一方、DNTTについては、弱い面内配向傾向は見られたものの、ペンタセンほどには配向傾向が強くないことが確認された。面内方向を含む複数の結晶面のエネルギー差が小さいことに起因すると考えられる。THz応答の評価については、光伝導アンテナによってTHz波を発生させる装置を構築し、時間領域分光法(THz-TDS)によって吸収スペクトルも測定できるようになった。0.2~1.5THz程度の周波数範囲について十分な強度を有しつつ3.0THz前後に向けて減衰するTHz波の発生を確認し、ペンタセン薄膜のTHz領域の吸収スペクトルが得られることも確認した。
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