研究課題
有機電界効果トランジスタ(OFET)において、結晶面内配向を制御することで、キャリア輸送を制限している結晶ドメイン境界のエネルギー障壁を無くした「電気的単一ドメイン」OFETを作成する方法を研究する。さらに、単一ドメインOFETに残る数~十数meVのバンド端ゆらぎを利用したTHzセンサの実現に向けての基礎的な研究を進める。22年度は、昨年度に引き続き、有機低分子半導体の代表格であるペンタセンおよびジナフトチエノチオフェン(DNTT)について、基板表面に化学エッチングによってスロープ構造を形成した「グラフォ基板」上での面内配向傾向とそれによるOFETの特性向上効果を調べた。ペンタセンについては、グラフォエピタキシーによって配向制御することで、特に成長速度の速い膜において電界効果キャリア移動度の向上が確認され、キャリア輸送を阻害するドメイン境界のエネルギー障壁数を約1/2に減らす効果があると見積もられた。これは、最終目標であるTHzセンシングのために大きな改善となる。一方、DNTTについては残念ながら明確な特性の向上効果は見いだされなかった。THz分光については、昨年度に引き続き時間領域分光法(THz-TDS)に用いる装置の改良を進め、0.2~3.0THz程度の周波数範囲の、これまでより高エネルギー成分を多く含むスペクトルを有するTHz波照射・分光が行えることを確認した。これを用いてペンタセンOFETのTHz領域吸収スペクトル測定を室温で行い、ゲート電場によって誘起されたキャリアによるブロードなTHz領域吸収が発生することの証拠を得た。これもTHzセンシング実現に向けての大きな一歩である。
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