有機エレクトロルミネッセンス(EL)では、電子準位の異なる有機薄膜を積層したり、三重項発光中心を導入することで発光量子効率を飛躍的に向上させることができる。真空蒸着により素子内の成分分布を制御できる低分子系有機ELでは高効率化材料設計指針の解明が進んでいるが、湿式プロセスによる高分子半導体を用いたEL素子では、構造制御の難しさからこれらの解明はほとんど進んでいない。本研究では湿式プロセスでの有機ELの高性能化指針を得ることを目的とし、超希薄溶液濃縮スプレイ(ESDUS)法による有機半導体の膜厚方向の成分分布制御と三重項発光高分子ELの高効率化指針を得ることを目指す。23年度では高分子発光層に三重項発光色素などの低分子を膜厚方向の特定位置に精密にドーピングする技術を確立することを目的とした。ポリチオフェンに対しフラーレン誘導体をドープした薄膜について、ドーピング領域と無ドープの領域を膜厚方向に20nmで制御した薄膜を作成、電子デバイス応用が可能な品質であることを太陽電池を作成することで示した。次に、発光性ポリマーF8BT薄膜中に赤色発光色素ナイルレッドを20nm単位で制御したドーピングを施し、高分子ELでの発光領域が膜内で従来考えられていたものより広いことを示した。
|