21年度の研究実績を下に箇条書きする。 1) 導電性高分子フィルムの電解伸縮と同時にQCM(水晶マイクロバランス)による質量の変化を、同時測定して電解伸縮のメカニズムの解明と伸縮率向上を図った。 2) イオン液体に極性溶媒を混入させることによって伸縮率は大幅に向上するが、電解伸縮を繰り返すと伸縮率は急速に低下する。この原因を解明し、イオン液体および極性溶媒の種類混合比など多くのパラメータを変化させ、これらを丹念に調べて最適な系を探した。 3) 電解伸縮の機能をソフトアクチュエータとして利用する場合、過大な負荷に対してクリーピングが問題となる。クリーピングとは張力下で塑性変形して伸びた状態となり戻らない現象である。この対策としてポリマーに架橋処理を行って電解伸縮の測定を行い、クリーピングを抑制することができた。 4) クリーピングのメカニズムを詳細に検証した。その結果、酸化および還元によってイオン架橋が生成あるいは消滅することがわかった。また、電気化学的酸化および還元の過程ではフィルム内はイオンの流動が起こるので柔らかくなり、荷重の印加によって、容易にクリーピングが起こることが分かった。 5) フィルムに強い引っ張り荷重を架け電気化学サイクルを行うと、高分子が引き伸ばされクリーピングが起こるが、酸化状態で止めるとイオン架橋によりメモリー状態となる。荷重を取り除くと、クリーピングは解消されることが分かり、これをメモリー効果として世界で始めて提案した。
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