研究概要 |
電気二重層キャパシタの諸特性は、電気二重層が形成される界面構造を最適化することで実現可能であり、基本的に容量は活物質の比表面積に大きく依存する。我々は高比表面積を有するポリエチレンテレフタレート(PET)由来の活性炭を開発し、その電気二重層キャパシタ挙動を評価した。開発したPET由来の活性炭の比表面積はグラム当たり3,600平方メートルであり、市販の活性炭に比べて倍近い比表面積を有する。本研究で作成したPET活性炭を電極活物質とした評価用キャパシタセルの放電容量レート特性を、市販の一般的な活性炭を用いたセルの特性と比較した。PET由来の活性炭を適用することで放電容量の大幅な増加が確認された。これは比表面積の増大によるものであるが、特筆すべきは、高い放電レートにおいてもその優位性は変わらなかった点である。一般的に、高比表面積の活性炭を適用した場合、電極自身の電気伝導性あるいは複雑な細孔構造による高レート時の大幅な容量低下が起こるが、このPET由来の活性炭では見受けられず、活性炭においてきわめてまれな、電解質イオン拡散に有利な最適な細孔構造と二重層形成最適場の両立が実現していると考えられる。 さらに、本年度では、ハロゲン化物を活性種に用いるキャパシタ系を前年度の水溶液系から非水溶液系に展開した。臭素イオンを含むイオン液体を電解液として用いた電気化学キャパシタセルの充放電は、水系と同様正極電位の上昇および充放電時における電位の停滞が観測され、臭素化物を含まない単純な電気二重層キャパシタに比べて大幅に容量が増加した。すなわち、電解液由来のハロゲンを用いたレドックスキャパシタは非水系においても適用可能であり、高出力かつエネルギー密度向上を可能とする理想的な電気化学キャパシタが提供できることが明らかになった。
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