新規駆動機構のせん断装置として、これまでに2台の特徴の異なる試験機を作製した。一台は、比較的高出力で厚さ1mm以上の試料の処理が可能であるが重量のあるもの(大型機と呼ぶ)であり、他の一台は低出力であるが軽量でありイメージング分光装置などに掛けることができるもの(小型機と呼ぶ)である。小型機では、厚さが1mmに達する試料を処理するほどのパワーはなく、数百μの厚さの試料についてのせん断処理しか出来ないが、処理結果をその場観察的にイメージング分光で詳細に評価しうる。さらに、小型機はコンピュータ制御で、より処理条件を正確に制御した運転ができる。大型機では、そのようなことはできないが、小型機で得られた条件を、ミリサイズの肉厚試料へとスケールアップした形で適用した処理が出来る。平成22年度後半から現在にかけて、主として小型機を用いて、せん断処理の条件パラメータを振りながら、配向メカニズムとの関連を考えながら、単結晶的配向に、より適した条件を探索している。 また、コロイド分散液として、これまでに扱ってきた水を溶媒とした系ではなく、溶媒自体が重合固化可能な樹脂溶媒に、シリカ粒子を分散した系を扱い始めた。この系は、水系と同様にせん断処理の効果がありながら、空気中の酸素の影響を受け難く、重合固化が容易である。さらに、固化後の切断も高分子ゲルよりは容易である。 以上によって、直線せん断による配向コロイド結晶作製条件の解明を進める条件が揃った。大型機により、厚さ1mm以上のバルク結晶の完成に向けて大きく前進した。
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