研究課題
研究計画に基づき、本年度は2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾピリジン(HPIP)とその誘導体について以下の成果を得た。1.新規誘導体の設計と合成電子吸引/供与性の異なる置換基を導入し、その種類や導入位置による単分子の電子状態変化とそれにともなうESIPT発光特性変化を検討した。その結果、イミダゾピリジン環を置換すると、電子吸引性の増大につれて発光は長波長シフトし、フェニル環に導入すると逆に短波長シフトした。波長シフトの大きさは20-70nmであり、いずれの誘導体も固相でのみ強いESIPT発光(量子収率:0.1-0.5)を示した。以上の結果より、化学構造変換という合成化学的な従来法でも、固体ESIPT発光は、良好な量子収率を保ちながら青緑~赤色まで発光色を幅広く制御できることが分かった。2.固相ESIPT発光特性と分子集積構造との関連性評価合成した誘導体について表題の検討をおこなった。補助期間中に、6-シアノHPIPが、黄・橙・赤の明確に異なるESIPT発光を示す三種類の結晶多形を形成する特異な系であることを見出したが、三種類以上の発光色を示す系は皆無であり、本研究課題に非常に有用な知見を与えることから、重点的に検討した。三種類すべての結晶構造解析に成功し、種々の媒体中での発光挙動や計算化学などの結果と検討した結果、発光種まわりの場の違いが発光特性に寄与していると示唆された。3.無色透明の白色発光体の作成(特願)ストークスシフトが大きい(Δν~10000cm-1)というESIPT発光の特徴を利用し、通常発光(Δν~3000cm-1)を示す有機材料と混合して高効率白色発光体を作成した。この材料は紫外光のみを吸収し、室内灯下で無色透明という特徴を持つだけでなく、蒸着膜や透明高分子フィルム中でも白色発光を示す優れた有機発光材料となることを明らかにした。
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