研究課題
スピン分極を考慮した電子構造の観点から、新たな蛍光発光材料の開発に結びつく現象の理解と材料探索指針の開拓をめざし、本研究では、多成分系の酸化物や窒化物などを雰囲気を制御した固相反応法で合成して、発光イオンとしてMnを付活した新しい蛍光体の探索を行うことを目的とする。本年度は、昨年度の物質探索で新たに見出されたMn付活蛍光体(Mg_<1-x>Mn_x)_2B_2O_5(0<x≦0.30)について、その電子構造を検討した。その結果、昨年度、明らかにされた可視光域の励起帯(波長414nm)の他に、より高効率発光をもたらす電荷移遷移に関係する励起帯が200nm以下の波長域で現れることが予測された。そこで、真空紫外光域で励起スペクトル測定を行ったところ、160nmの波長の光照射により、可視光域のd-d遷移による励起での発光と同様、670nmにピークを持つ暗赤色の発光スペクトルが観察された。スペクトルの形状に大きな変化は見られなかったが、その強度は、予想された通り、可視光励起の場合に比べ10倍以上であることが明らかになった。また、この物質にα線を照射したところ、同様の発光スペクトルが観測され、α線のシンチレーターとなることが示された。さらに、中性子捕獲反応の効率に優れる^<10>B同位体を含有するホウ酸を原料に用いて(Mn_<0.05>Mg_<0.95>)_2B_2O_5の多結晶セラミックス板を作製し、中性子用シンチレーターとしての評価を行った。本研究で作製された多結晶セラミックスは、母体が軽元素から構成されていることから、γ線に由来するバックグラウンドノイズの少ない中性子検出が可能であることが分かった。
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