研究課題
スピン分極を考慮した電子構造の観点から、新たな蛍光発光材料の開発に結びつく現象の理解と材料探索指針の開拓をめざし、本研究では、雰囲気を制御した固相反応法で多成分系の化合物を合成し、発光イオンとしてマンガンを付活した新しい蛍光体の探索を行うことを目的とする。本年度は、酸化リチウムマグネシウムマンガンホウ素(LiMg_<1-x>Mn_xBO_3)の固溶体を合成し、それらの結晶構造や発光特性とスピン分極を考慮したクラスター計算によるマンガンイオンの電子状態について研究を進めた。800℃の固相反応で合成された固溶体の結晶構造を粉末X線回折法で調べた結果、0<x≦0.60までは単斜晶系で、x>0.60では六方晶系であることが明らかにされた。また、自己フラックス法でX=0.5の単結晶を合成し、X線回折法で結晶構造を解析した結果、単斜晶系の構造中では、酸素原子により5配位されたサイトにマンガンイオンとマグネシウムイオンが統計的に配置していることが示された。酸素原子により5配位された2+マンガンイオンの発光に関しては、これまでほとんど報告がない。可視光域の励起帯は波長428nm付近にあり、xの増加とともに発光ピークは696nmから689nmへ変化した。また、最大発光強度はx=0.2付近で測定された。蛍光寿命は、xの増加とともに24msからx=0.30で0.4msへと変化した。さらに、200nm付近の紫外光励起で高効率発光を示す電荷移動遷移に関係した励起帯が見出された。単結晶構造解析結果をもとにマンガンイオンを中心としたクラスターモデルを設定して電子状態計算を行ったところ、マンガンイオンのd軌道の5つの電子がupスピン状態の軌道に入っていることが示され、実験で観測されたd-d遷移発光がスピンの向きの変化を伴う禁制遷移で、発光寿命が長くなることが示唆された。
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