クリーンで高効率な燃料電池自動車の本格的普及に向け、燃料となる純水素の高効率な大量製造法の確立が必要である。安定化ジルコニアなどの固体電解質を用いる高温水蒸気電解(SOEC)では、カソードで水蒸気から水素を発生させ、生じた酸化物イオンが電解質中を移動してアノードで酸素を発生させる。一段階で高純度な水素が得られるという水電解法の特徴に加え、高温では、熱力学的および反応速度論的に有利になり、貴金属電極を用いなくても低い電解電圧で水素製造が可能になる。また、逆作動させれば固体酸化物形燃料電池(SOFC)として機能し、高効率発電も可能になる。すなわち、電力と水素の直接交互変換装置である。 本研究は、高性能かつ高耐久電極を開発し、低温作動SOECの実現に貢献することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。 1. 噴霧プラズマ合成法により、電子-イオン混合導電性ガドリニアドープセリア(CeO_2)_<0.85>(GdO_<1.5>)_<0.15>(GDC)微粒子にNiナノ粒子触媒を高分散することに成功した。高電流密度域での電極特性の向上のために、微細構造の制御を行っている。 2. (Sr_<1-x>Ce_x)MnO_<3±δ>(SCM)を合成し、酸素極特性を調べた。X=0.1~0.4でn型電子伝導性を示し、X=0.3で最大の300S/(cm)となった。その組成のSCMをSOFCカソードに用いると、800℃、定電流密度0.2Acm^<-2>で1000hに亘って安定に作動することが確認できた。さらに40vol%のSDC. (CeO_2)_<0.8>(SmO_<1.5>)_<0.2>を添加すると、イオン導電性の向上により、カソード特性が著しく改善されることを見出した。
|