研究概要 |
本研究では、ナノ細孔界面・空間におけるイオン移動ダイナミクスを明らかにし,高速移動のための細孔構造の設計・制御を行うとともに,イオンと電子が共に効率よくアクセスできる理想電極材料を創製し,高速充放電電極材料としての高機能化を目指すものである。平成21年度は,存機-無機複合前駆体からミクロ多孔カーボンを得る新手法を開発し,同ミクロ細孔空間における電気二重層構造の特異性を示した。今年度は,メゾ・マクロ領域の細孔を有するグラファイト性多孔体およびLiイオン二次電池活物質・カーボン複食多孔体を合成し,高速充放電特性を評価した。 コロイド結晶を鋳型にして得た多孔カーボンにNi触媒を担持し,900~1400℃で熱処理することによりグラファイト性多孔体を得ることに成功した。ピッチ系カーボンを2500℃の高温で熱処理して得たグラファイト性多孔体よりも細孔構造の規則性に優れ,またLi挿入脱離反応に対してより高容量であり,かつ高速インターカレーション特性に優れていることが分かった。交流インピーダンス測定より,今回得られたグラファイト性多孔体は,界面反応抵抗が小さいことも明らかにした。一方,溶液中,多孔カーボン共存下でLiMnPO_4やSnの合成を行い,活物質・カーボン複合多孔体を合成した。活物質ナノ粒子がカーボン細孔内外に析出した複合体が得られていることがわかった。定電流充放電測定より,いずれの複合体も,活物質のみの試料よりも高容量であり,LiMnPO_4系にあってはレート特性も向上した。さらなる充放電特性の向上のためには,優先的に細孔内へナノ活物質を担持した複合構造形成が望まれる。
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