研究概要 |
本研究では、ナノ細孔界面・空間におけるイオン移動ダイナミクスを明らかにし,高速移動のための細孔構造の設計・制御を行うとともに,イオンと電子が共に効率よくアクセスできる理想電極材料を創製し,高速充放電電極材料としての高機能化を目指すものである。平成21,22年度において,ミクロ多孔カーボン,メゾ・マクロ多孔カーボン,グラファイト性多孔体の合成に成功し,電気二重層(EDLC)容量と細孔構造の関連性について調べるとともに,活物質・多孔カーボン複合多孔体の構築を通して充放電特性の向上を明らかにした。平成23年度は,得られたナノ材料の充放電特性におけるナノサイズ効果を解明し,さらなる特性向上について検討した。主な成果を以下に示す。 1.ナノ多孔カーボンにおいて,イオン溶媒和サイズ前後の小さいミクロ細孔において大きなEDLC容量が観測され,というこれまでの通説を覆す結果が得られたことより,ラマンスペクトルやNMR測定を行い,ミクロ細孔内電解質の特異性を調べた。その結果,ミクロ細孔内には,バルクより少ない溶媒和数の電解質イオンが多く存在し,電気二重層構造そのものがバルク界面と異なる可能性を見出した。 2.多孔カーボン細孔内にLiMnPO_4ナノ結晶を析出させたナノ複合体において,バルクLiMnPO_4よりも優れたレート特性が発現することを明らかにした。LiMnPO_4は,LiMnPO_4/MnPO_4の2相間での相転移エネルギー障壁が高く,バルクではスムーズなLi挿入脱離反応が進行しにくい。これに対し,ナノサイズ化することにより,固溶領域が広がり,高速でのLi挿入脱離反応が進行することをLIインピーダンス測定やGITT測定より解明した。
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