研究課題/領域番号 |
21350120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西 敏夫 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (70134484)
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研究分担者 |
中嶋 健 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (90301770)
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キーワード | ゴム材料 / 熱可塑性エーストマー / 原子間力顕微鏡 / ナノ力学物性マッピング / ブロックコポリマー |
研究概要 |
本研究ではラボレベルで混練・射出成形可能な装置を導入し、実用的な熱可塑性エラストマー製品に近い試料を作成し、我々のグループで開発してきた原子間力顕微鏡を基礎に据えた「ナノ力学物性マッピング手法」によって熱可塑性エラストマーの特異な力学物性をナノスケールで調べることを目的としている。通常、原子間力顕微鏡は試料の凹凸を測定するためのツールとして利用されるため、試料が変形しては困る。従って、試料の弾性率に比較して軟らかい探針を使う必要があるが、発想を転換して試料を積極的に変形し、その変形量から試料の力学的物性値を検出しようとするのが本手法である。この発想から、本手法では弾性率や凝着エネルギー、粘性に起因するエネルギー散逸などを画像として表すことができる。従來の構造解析手法では構造が解析されたその位置での物性評価を行うことは難しいが、本手法では同一視野で構造と物性の評価が行えるので有利である。 二年目である平成22年度は初年度に続き、熱可塑性エラストマーの代表的存在であるブロックコボリマー試料への応用を行った。世には原子間力顕微鏡を用いたブロックコボリマーの研究がごまんとあるが、そのほとんどはタッピングモードを用いた位相像による研究である。しかしながらこの方法で何故イメージできるのかという本質的な問いに答えられる人はほとんどいない。我々の考えでは、ブロックを構成している二種あるいは三種の成分の官能基の違いが凝着力の違いとして単にイメージされている可能性があると考えている。ただし凹凸もある程度出ているようで硬さの違いが「見かけの高さ」の違いとしてイメージされている可能もあった。この点を明らかにするために、従来の手法(透過電子顕微鏡や原子間力顕微鏡)で研究されてきたのと同じ「熱処理」試料を相手にナノ力学物性マッピングを行った。結果は予想通りで、見かけの凹凸像は試料変形の影響を大きく受けており、真の凹凸像は見かけの凹凸像と高低が逆転していることも判明した。組成比の異なる一連の試料でもこのことを確認し、昨年度に引き続きMacromolecules誌に二報目の論文を投稿した。また混練機で高せん断をかけて加工した試料についても同様の解析を行い、「熱処理」試料とは全く異なる相構造を観察した。この件については現在論文を準備中である。平成23年度は以上の成果をもとに熱可塑性エラストマーの物性発現メカニズムの追求を行う予定である。
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