ゴム的性質をもちながらも射出成形などの溶融成形が可能となる次世代型のエラストマー材料である熱可塑性エラストマーは、成形加工工程の合理化に加え、加工製品のリサイクル性に特色があり、省エネルギーや環境問題に関する現代のニーズに合致した材料である。この熱可塑性エラストマーについて、実用的に使われうる成形プロセスを経た材料について構造解析と力学物性評価を行い、熱可塑性エラストマーの基礎研究を実用の熱可塑性エラストマー製品開発に役立つところまで昇華させることを目的として研究を行った。そのためにはナノスケールで力学物性を評価することが研究の鍵となり、我々の研究室で開発してきた原子間力顕微鏡を基礎に据えた「ナノ力学物性マッピング手法」を用いて研究を推進した。最終的には高せん断を経験したTPE材料では、熱処理を加えたのみの試料とは全く異なる力学物性を示し、それがナノ構造の変化に起因していることを確認できた。
|