「研究の目的」現行の炭酸ガスレーザー超音速延伸法を発展させ、複数本の繊維を同時にナノファーバー化できる「炭酸ガスレーザー超音速マルチ延伸法」を確立し、実用化が可能なナノファイバーシート作製法の基礎的な知見を得ることを目的とする。さらに、本成果を基にナノファイバーシートの量産型装置の開発につなげる。 「研究実施計画」 1.CO_2レーザー超音速マルチ延伸装置の大型化 幅広いナノファイバーシートを連続的に巻き取ることが可能な装置を作製するために、(1)複数本の繊維を同時にナノファイバー化できるオリフィスの検討、(2)捕集したシートを巻き取る機構の検討を行った。 (1)オリフィス配列の検討繊維が均一にナノファイバー化できるオリフィス配置を検討した結果、40本のオリフィスを2列に配置することで、80本の繊維を均一にナノファイバー化できること分かった。 (2)長尺シート巻取り機構の確立均一なロール状ナノファイバーシートを作製するために、ナノファイバーを均一に捕集でき、シートを巻き取れる機構を開発した。この装置では、ネットコンベアーに捕集したナノファイバーシートを、直接、巻き取らず、シートをPETフィルムに移すことで連続的に巻き取ることが可能となった。 以上、本研究課題では、幅広い長尺ナノファイバーシートを作製するための基本的な機構を確立できた。 2.ナノシートの高次構造解析 CO_2レーザー超音速延伸過程で起こる高次構造変化を検討するために、FT-IR測定および広角X線回折測定を行った。分子鎖のコンボメーション変化を調べるためにPETナノファイバーシートのトランス/ゴーシュ比を評価し、赤外二色比から分子鎖の配向性を測定した。その結果、チャンバー圧の低下に伴い、トランス/ゴーシュ比は増加し、ゴーシュからトランスにコンポメーション変化している。このコンボメーション変化は分子鎖の伸び切りを示唆し、分子鎖の伸び切りは非晶鎖の流動配向化と配向結晶化が延伸過程で起きていることを示す。また、ナノファイーを揃えて測定した赤外二色比から、分子鎖が繊維軸方向に配向していることが示された。広角X線回折測定からは、配向した微結晶が存在していることが示唆された。 以上、CO_2レーザー超音速延伸法では、配向したナノファイバーが得られていることが明らかとなった。
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