本研究目的は、安全かつ安価な超分子ゲル化剤の開発とその実用化であった。分子量分布や屈曲鎖の運動により結晶化しないというポリマーやオリゴマーを利用して安定なゲルを形成するゲル化剤を開発し実用化を目指した。すなわち、(a)水素結合やファンデルワールス力などの非共有結合をとおして液体をゲル化するゲル化駆動としての機能と(b)非晶性のポリマー(あるいはオリゴマー)は溶液中から結晶化しないという現象に着目し、これらの二つの機能を結合させた結晶へ転移しない安定なゲルを形成するポリマー型の超分子ゲル化剤を開発することが目的であった。具体的には、(b)の機能を有する非晶性のポリマーあるいはオリゴマーを(a)の機能をもつゲル化駆動部位を共有結合でつなげることにより、ゲル化駆動部位の自己集合性と高分子の非晶性という一見、相矛盾する二つの機能を階層化させた新規な超分子ゲル化剤を開発しようとするものであった。化粧品、インクジェットプリンター用インク、機能性ゲル化剤への応用を念頭において研究を行った。 その結果、複数の新規超分子ゲル化剤の開発に成功した。チキソトロピーという新しい挙動をみつけ、インクジェットプリンター用のインクとしての重要性を見つけた。また、国内大手のK化粧品会社より実用化が進行するまでになった。また、ポリマー型の新規超分子ゲル化剤については、国内大手のT社により実用化が検討されており、製造コストが解決課題として残っている。製造コストの低下に向け、次なる研究が予定されている。
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